子供たちが独立し、一息ついたときにやってくる問題が親の実家の存在です。
そのうち対応しなければと思いつつ先延ばしにしがち。
ゆくゆくは子供たちへの相続を考えなければいけない日がやってきます。
かつては兄弟姉妹に平等に相続できるよう、複数の相続人に対してどう分配していくかを協議することが遺産相続において最も困難な問題とされていましたが、現代では別の形の問題が増えています。
あなたが大切にしてきた親の実家を、子供たちが誰も相続したがらないという問題です。
不動産の価値は年々下がることを直視しよう
地方の地価は購入時より大幅に下落している
子供が相続したがらない第一の理由に、地方の家には資産価値がない点が挙げられます。
長年働き続け、ようやく手に入れた自分たちだけの家……。
土地代を含め数千万円分のローンを組み、何十年も支払い続けたことから、高い資産価値を持っていると認識しているでしょう。
実際に「実家を相続させてあげるから老後の面倒を見てほしい」という交渉材料にも使われることもあったほど、家という不動産には高い価値がありました。
しかし不動産の価値はさまざまな要因により年々低下していきます。
国土交通省が発表している「都道府県地価調査」を調査すると、地方の地価は年々下落していることがわかりました。
出典:国土交通省 都道府県地価調査
平成22年の地価を100とした場合、平成30年までの8年間ですべての地域の地価が10~20%下落しています。
その要因の一つには、地方圏の人口減少による経済的な価値の低下が影響しています。
人口が少ないためその地域での商売が成り立たなくなり、働き口が減っていくことでさらに人が定着せず、経済的な価値が減少していきます。
所持しているだけで税金・管理費といった支出が発生する
第二の理由は、所持しているだけで支出を生むという点にあります。
土地や家屋といった不動産には、所持しているだけで固定資産税などの税金がかかります。
不動産にかかる税金は評価額に応じた額となるため、数千円~数万円程度の価値しかないと評価された場合には、支払う税金はほぼゼロとなります。
しかしある程度の価値があると評価されてしまう場合には年間数万~数十万円の税金が発生します。
手放すことも難しい地域にある場合には、手放すこともできず税金を支払い続けなければなりません。
また不動産を所持している間は、所有者に管理義務が発生します。
倒壊や不法侵入といった問題が発生しないよう管理するにも費用がかかり、その上でもし火災や倒壊などのトラブルに見舞われた場合、所有者は対処をしなければなりません。
年々価値が下落していく上に出費が発生し、大きなトラブルの種になる恐れがあり、利用する見込みも立てられない、困った存在となっていく地方の家。
資産どころか負債といえる存在になってしまうため、最初から相続しなくてもよいと考える子世代は少なくないのです。
あなたの実現したいライフスタイルは子供の意向とは違う
子供の生活基盤はすでに別の場所に作られている
進学を機に実家を離れ、いずれ結婚をし、孫が生まれたころに再び実家で親子三代一緒に暮らすというようなライフスタイルを夢見る親世代も多いでしょう。
しかし一度実家から離れた子供は、仕事場の所在や孫世代の教育環境などを理由に、生活の基盤を別の土地に築いていきます。
新たに新築した家や見晴らしのいいマンションが子供にとっての自宅となっていき、実家は年に数回帰るだけのものとなっていくのです。
どんな形でも何かしら子世代・孫世代に財産を残してあげたいと思うのが親心です。
せっかく残すなら子供たちの負担にならない形で資産を残したいもの。今のうちから、地方の家の処分方法を考えておくのはいかがでしょうか。